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セレニウム(セレン) −以下の文章は特定の製品や商品とは関係なくかかれています。−
「セレニウムの化学的解説」
 酸素族元素の一つ。
灰色の金属セレンのほか、赤色の結晶セレン、赤色粉末の無定形セレン、
黒いろのガラス状セレンなどの同素体がある。
地球上には硫黄に伴って広く存在するが、量はごく少ない。
性質は硫黄と似ている。
ガラスの赤色着色剤や光電池・整流器などに利用。
元素記号Se、原子番号34、 原子量78.96。

「セレン(セレニウム)の歴史」
 セレン(またはセレニウム)は、1817年にスウェーデンの化学者ベルツエリウスによって発見されました。
化学的には硫黄によく似ていますが、存在量は少ない物質です。
燃える時に月のような光を放つので、ギリシャ語の月「セレン」にちなんで名づけられました。
 セレンは北アメリカ西部の土壌や植物中に比較的多く存在し、
この地域の家畜がアルカリ病と呼ばれるセレン中毒症を起こしたことから、
最初は毒物として注目された様です。
 1957年にアメリカのシユバルツらは、
トルラ酵母という酵母を主とした特殊なえさをネズミに食べさせると、
肝臓が障害されて死亡してしまうことを見出しました。
このトルラ酵母をビール酵母に変えると、このような肝臓の障害はなくなりました。
そこで、ビール酵母とトルラ酵母のちがいを調べると、トルラ酵母にはビタンEが不足しており、
さらにビール酵母中に存在する水に溶けやすい性質をもった微量物質に、
ビタミンEを節約する効果のあることがわかりました。
この微量な物質がセレンであることをつきとめ、セレンは必須な生体微量元素と認められたのです。

「セレンの効用」
 近年、ミネラルに関する研究の中で、もっとも注目されているものにセレニウムがあります。
ガン発生を抑え、転移も防ぐほかに、狭心症心筋梗塞の予防に役立ち、
若返り効果が抜群だということがわかってきたためです。
成人病の高血圧や動脈硬化に関するセレニウムの作用については、
血圧をコントロールするホルモンの一種「プロスタグランディン」を体内で
産生するのに欠かせないミネラルであり、
血管を拡張させたり、血液が固まるのを防いで、
動脈硬化や血栓症(心筋梗塞、脳血栓など)を防ぐ効果があると考えられています。
さらに、老化の原因になる過酸化脂質を取り除く抗酸化剤としての役割もあります。
 これを詳しく解説すると、セレンはビタミンE(過酸化脂質を抑制)の作用を
代替すると考えられていたのですが、その後の研究で同じような作用はもっていますが、
作用のしかたはちがっていることが明らかになりました。
つまり体内に過酸化脂質が大量にできると、動脈梗化、肝臓障害、
糖尿病、白内障などの成人病を発生させる誘因になりますが、
セレンはこの過酸化脂質を分解する「グルタチオン・バーオキシダーゼ」と呼ばれる
酵素の構成成分となり、この酵素が働くのに中心的な役割をもっています。
したがってセレンは、老化防止の作用があるといえます。
セレンの生理作用のおもなものは、この作用であると考えてよいでしょう。
ビタミンEは過酸化脂質が生成するのを防止する作用があるので、
過酸化脂質を減少させるということで結果的にはセレンと同じような役割をもっているのです。

 −注目される発ガン抑制作用−
 セレンが発ガン性を有するという研究結果がかなり古い時代に発表されています。
1943年にアメリカのネルソンらは、ネズミにセレンを多量に含有するエサを
一年半から2年間(ほぼネズミの寿命)与えて飼育したところ、
肝硬変が起こって53匹中11匹に腫瘍が発生したと報告しています。
このほかにもセレンが発ガン性を有したとの報告がありますが、
これらの初期の研究はエサの中のタンパク質の含有量が低かったり、
またセレンの濃度がきわめて高かったりしており、
実験計画に欠縮があったものと考えられるようになっています。 
現在では、セレンはむしろガンを防ぐ作用を有する微量元素として認識されています。
セレンがガンを抑制する作用としては、
前に述べたセレン酵素であるグルタチオン・バーオキシダーゼが発ガン物質を分解するのか、
あるいはセレンが他の無機質の発ガン作用を不活性化するのではないかと考えられています。

 −水銀の毒性を軽減する鋤き−
 水銀は水俣病の原因物質として有名で、きわめて毒性の強い金属です。
そして、マグロには非常に高濃度の水銀が存在しますが、
マグロ自身が水銀中毒症状を示すことはありません。
 アメリカ・ウイスコンシン大学のガンターらは、
ウズラを用いてこのなぞを解くための実験を行っています。
ウズラにマグロを与えても水銀中毒は起こらないのですが、
マグロに入っているのと同じ量の水銀をウズラに食べさせると水銀中毒が起こります。
そこでマグロの中の何かの物質が、水銀の毒性を軽減させることが考えられました。
海産生物は陸棲生物よりセレン農度が高いことが知られていますが、
とくにマグロは常にセレン量の方が水銀量を上まわって高濃度に含まれています。
いろいろ調べた結果、おもしろいことに高濃度の水銀を含有しているマグロはセレン含有量も高く、
セレン含有量の低いマグロは水銀量も低いことが明らかになりました。
このようなわけで、セレンは水銀と結合して毒性の低い物質をつくるのであろうと考えられるようになりました。

 −水銀と結合して肝臓に沈着−
 水銀の毒性に対するセレンの影響についてかなり多くの研究が行われ、
セレンが水銀の毒性を軽減することが確認されています。
その一例として、千葉大学薬学部の山根靖弘教授らが行った実験があります。
ネズミに水銀とセレンを与えてその違いを表した実験ですが、
水銀を投与したネズミは、10日までに全部死亡しますが、
セレンと水銀を同時に与えたネズミは全部生き残っています。
そして、肝臓中の水銀量は、水銀だけを与えたネズミよりセレンと
水銀を与えたネズミの方が多くなっています。
セレン濃度についても同様で、セレンだけを与えたものよりセレンと水銀を与えた方が
肝臓中のセレン量が高いのです。
これは水銀とセレンが結合して無毒で安定な化合物をつくり、
肝臓に沈着するからだと考えられます。

「セレンの毒性」
 セレンはガラス製造など窯業関係で添加剤として使用されます。
また、光電管、電送写真、フィルム、合金、メッキ、顔料などの原料として用いられます。
このような産業現場でしばしばセレン中毒が発生します。
ほとんどの場合セレンを含む塵挨が気道から呼吸器に侵入することによって起こるもので、
急性中毒では目、鼻、のどなどが刺激され、大量吸入の場合はせき、
呼吸困難、吐き気などを呈します。
慢性中毒ではめまい、顔面が蒼白になり疲労感、胃腸障害、
食欲不振などの症状があり、貧血、肝臓障害、腎臓障害を招きます。
したがって、わが国の産業現場では、
空気1立方メートルにつき0.1ミリグラム以上のセレンが存在してはならないとされています。

「セレンの欠乏症」
 動物をセレン欠乏にすると、成長が遅れ、筋肉萎縮症、肝臓障害、不妊症、
免疫低下などビタミンE欠乏症とよく似た症状を呈するようになります。
 人間では、開発途上国に見られる栄養失調者の血液中のセレン濃度が低く、
セレンを与えることによって症状がよくなったことが報告されています。

 −土壌低濃度地域で欠乏症が発生−
 一九三五年(昭和一〇年)、
満州黒竜江省克山県(現在の中国北東部)に「克山の奇病」といわれる
原因不明の病気が発生し、多くの死者が出ました。
当時、満州医科大学には日本の学者が教授として勤務していて、
これらの学者の調査の結果、この病気は伝染病ではなく心臓の
病気であることが明らかになりました。
そしてその原因として、一酸化炭素中毒であろうという説が有力でした。
克山病はその後も中国において発生し、中国でのその後の調査研究の結果、
この病気の本態はセレン欠乏ではないかと考えられるようになってきました。
その根拠として、克山病流行地では水、土壌、食品などのセレン濃度が低く、
住民の毛髪中のセレン量も非流行地の三分の一以下であることがわかりました。
四川省では、セレンを与えなかった児童で、
1000人につき14人の克山病患者の発生率でしたが、
セレンを与えておくと1000人につき2人しか患者が発生しなかったとの調査結果があります。
また、克山病流行地の住民は、
「グルタチオン・パーオキシダーゼ」の働きが弱い事もつきとめられています。

「セレンの食品分布と必要量」
 セレンは、いろいろな野菜に含まれていますが、その量は微々たるものです。
比較的多いとされるのはコウライ(高麗)ニンジン、ニンニク、タマネギなど。
ほかにバター、ニシンの薫製、ワカサギ、小麦胚芽、ブラジルナッツなどにも、
割合に多く含まれています。
主な摂取源となるのは魚介類と穀類で、魚介類・海草類にもっとも多く、
米、麦、大豆などにも多く含まれています。
肉類のセレン量もかなり多いのですが、野菜、果物には少ないようです。
 魚介類中のセレンは先に述べたように、水銀と強固に結合しているものがあるようで、
腸管から吸収される型になっているかどうか不明です。
 セレンの吸収や利用率は、食品中のセレンの形態や同時に存在する物質などに影響されて、
かなりちがってくると考えられます。まだ詳細はわかっていません。

 セレンの所要量を決めている国はまだありません。
セレンは必要量と中毒を起こす量のちがいがそれはど大きくありませんので、
セレンの所要量を決めるのはかなりむずかしいことです。
実験でほとんどの動物が、えさ一kgの中に100μgのセレンが入っていれば、
欠乏となる事は無いという事実から推測すると、
人間では一日に100〜150μgくらいの必要量であろうと考えられます。
この必要量の10倍以上摂ると中毒を起こすおそれがあります。